投稿者:下北沢病院
医師 菊池守

踵が痛い、そんなときには足に何が起こっているのでしょうか?
踵の痛みには様々な原因があります。足底腱膜炎が有名ですが、原因となりうる疾患はそれだけではありません。正しい診断には病歴や診察や検査などが必要です。
第2回では踵の痛みの診断についてもう少し勉強してみましょう。

A.病歴の重要性
踵の痛みを診断するうえで病歴の聴取は非常に重要です。
症状はいつから始まったのか?どれくらいの頻度でどれくらい痛みが持続するか?悪化要因と改善要因、これまで行われた治療は?関連する外傷は?家族歴にかかとの痛みや全身性関節炎はあるか?全ての情報を収集した後にいくつかのことを考えます。

①痛みが起こったらどれぐらい長く続くか?
急に発症した痛みの場合には疲労骨折や痛風、足底腱膜の断裂などがあげられます。
痛みが短時間しか続かず歩くと改善する場合には、足底腱膜炎、全身関節炎に伴う踵の痛み、そして軽度の神経絞扼を考慮します。痛みが長く続いたり歩行中の慢性の痛みの場合には神経絞扼や骨折、骨嚢胞や足底踵腱膜の断裂を考えます。

②どういう場合に痛みが悪化し、どういうときに改善するか?
これは病歴の中で最も有用かもしれません。筋膜炎や全身性の疾患による踵の痛みでは、少し歩けば改善します。骨折や軟部組織の腫瘤、踵骨嚢胞や神経の絞扼、腱断裂や筋膜の断裂では活動することによって悪化します。
神経痛や筋膜炎、また全身性疾患による痛みはストレッチやインソールで改善しますが、踵骨嚢胞や骨折、腱断裂の場合には改善しません。また鎮痛剤などの抗炎症治療によってこれらの症状のほとんどは改善します。

③外傷歴と家族歴
踵痛の外傷には踵骨の骨折、腱断裂や筋膜の裂傷を含みます。全身性関節炎の家族歴がある場合には診断の上で非常に有益な情報になります。

B.診察所見
診察は4つの分野に分けられます。皮膚、神経、血管、そして筋肉の検査です。

①足底動脈や後脛骨動脈の拍動のチェック
血行不全の可能性を確認します。もしあれば血行不良があれば外科的処置が必要になるでしょう。しかし血流が悪いからと言って必ずしも踵痛になるわけではないです。

②皮膚科的な検査
皮下に軟部組織の腫瘤がないかどうか触診をします。また乾癬性関節炎や関節リウマチのような潜在的な全身疾患がないかどうかを皮膚症状から確認します。もし足首や膝、肘、手などの皮膚に部分的に白くカサカサした境界明瞭なエリアがみられる場合には乾癬の疑いがあり皮膚的な検査を進める必要があるでしょう。下肢静脈瘤や皮膚潰瘍についてもチェックしなくてはいけません。

③神経学的な検査
足関節内側で神経走行に沿ってチェックします。まず足根管での足底や踵に感じるTinel徴候(指先で軽く叩打することでその先にびりっと来る感じがあることをTinel陽性と言います)を確認し、踵だけに痛みが限局する場合には脛骨神経踵骨枝や外側足底神経を詳しく調べる。Tinel徴候がもっと遠位(つまり爪先よりの前足部)にある場合には足根管での神経の圧迫と脛骨神経踵骨枝の両方を考慮します。
脛骨神経の分岐である外側足底神経の踵骨枝が踵外側へ向かう途中で足底の踵骨棘と踵骨への付着部へと向かいます。踵の外側に圧痛がある患者では踵骨神経絞扼を疑います。

④筋肉の検査
最初に腓腹筋のチェックから始めます。続いてアキレス腱やふくらはぎのそのほかの筋肉の拘縮と足関節の背屈制限を確認します。また足関節の変形性関節症や不安定性についても確認する必要があります。過度の回内によって足部のアライメントが不安定になることで腓腹筋の拘縮が起こって結果的に踵に痛みが引き起こされる症例もよく見られます。
続いて踵の足底面で圧痛の位置を調べてください。足底筋膜炎を伴う疼痛は踵骨の内側突起に通常起こることが多いです。土踏まずの痛みは筋膜や腱のオーバーユース(慢性の疲労)によって引き起こされることが多いでしょう。

⑤その他
踵骨の疲労骨折や踵骨嚢胞の場合には踵を両手で踵を挟むようにして横から圧迫すると痛みが増強します。また疲労骨折では音叉を振動させながら圧痛の最大点を圧迫すると痛みが増強します。また骨嚢胞や骨折の場合には踵は腫れていることが多いのも特徴です。踵を触って軟部組織を圧迫してみて、皮下に腫瘤がないかも確認してください。
足底腱膜炎と違って踵周囲での筋断裂を起こしている場合には、足底腱膜と同じ部位に痛みを引き起こすものの足底腱膜炎と違って痛みが強く、少し歩行したとしても痛みは取れなません。こういう場合には検者の足趾を伸ばそうとする力に逆らって屈曲してもらうと痛みを誘発するので診断に有用です。
痛風が原因で踵の痛みが出ることは非常にまれですが、その場合には発赤、熱感、腫脹が見られ、皮膚は腫れてテカテカし痛みが強く急速に発症します。

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菊池 守

菊池 守

院長下北沢病院
「教えて、足病先生!」塾長であり日本初の「足」の専門病院の院長。 日本で「足病科」「足病学」を確立する礎となる病院にすることが目下の目標。