投稿者:佐賀大学医学部附属病院
看護師・助産師・リンパ浮腫技能士 渡辺直子
1.静脈のしくみと働き
本日は静脈のお話をしていきましょう。その前に、今回のタイトル「半分青い静脈」というタイトルでもあるように血管が青く見える訳をお話しましょう。なぜ青く見えるのか?もしかしたら、私たちがアバターだから?という訳ではなく、全員赤い血が流れています。青色に見えるのは単純に光の波長の中で青色は波長が短く血管まで到達できず反射して青く見えるのだそうです。それは空が青色の光が反射して青く見えることと同じなのです。血管の青さと空の青さの秘密がおんなじなんてロマンティックですよね。
さて、血管の働きを考えると、人の体を町にたとえるなら、動脈は上水道であり、静脈とリンパ管は下水道ということになります。静脈の循環に深くかかわっているのが、静脈内の「弁」と、ふくらはぎ(下腿)の「筋肉」です。静脈は常に、重力による圧がかかっています。圧は静水圧と呼ばれ、体位によって変わります。静水圧は静脈に水を引き込む圧であり、これにより静脈は血管へ水を引き込みます。そして、ふくらはぎの筋肉の収縮によって、静脈が狭められ血液を駆出します。そして、血液が元に戻らないように弁を使って逆流を防止するのです。本当に人の身体って精巧にできていますよね。
静脈が障害される要因は、主に1)弁の障害、2)静脈自体の閉塞、3)駆出力の低下という3つの原因に分かれます。このような静脈疾患の検査は超音波エコーにより特定できます。
1)静脈瘤(弁の障害)
静脈が弁不全により静脈内庄が上昇し、静脈が拡張・蛇行する疾患です。症状としては、静脈の怒張(ふくれあがる)だけですが、進行により立位での下肢のだるさやうっ血感、重量感、疼痛、浮腫、こむらがえりなどが出現し、静脈瘤部のかゆみ、かくことによる慢性湿疹様の皮膚炎なども現れてきます。 慢性期になると浮腫、出血、皮膚の色素沈着、難治性潰瘍、血栓性静脈炎の急性症状、うっ滞性皮膚炎などが出現します。治療は圧迫療法+スキンケア+生活指導による保存療法と、外科的治療が行われます。難治性潰瘍を生じた患者では長期の創傷管理+圧迫療法が必要です。
2)深部静脈血栓症(DVT)(血管の閉塞)
主に下肢の深部静脈に血栓が出来ます。肺血栓塞栓症(PE)と深部静脈血栓症は総称し静脈血栓塞栓症(VTE)と呼ばれることもあります。深部静脈血栓症の症状はほとんどが無症状で経過することがあるので、ハイリスク因子に注意し観察することが大切です。治療は圧迫療法と薬物による抗凝固療法・血栓融解療法があります。肺血栓の場合は手術を行うこともあります。
3)廃用性浮腫・加齢性浮腫(筋ポンプの低下) 年を取ると筋肉が衰え、細くなります。また、車椅子生活等による筋力低下により、下肢の血液が滞って浮腫となります。これを廃用性浮腫と呼びます。特に腓腹筋・ヒラメ筋の筋力低下により引き起こされることがあります。廃用性浮腫では特に、この2つの筋力低下により、起立性低血圧を引き起こすこともあり、益々ADL低下を来すため、治療としては、軽圧の弾性ストッキング等を着用し特に足指・足首の運動等が必要です。静脈疾患での治療では、圧迫療法とスキンケアがいずれの場合も特に重要です。これらは、病院ではなく、患者さん自身のセルフケアによるところが多く、患者さんのセルフケア能力アセスメントが看護の重要な役割となります。