投稿者:下北沢病院
医師 菊池守
踵が痛い、そんなときには足に何が起こっているのでしょうか?
踵の痛みには様々な原因があります。有名なものとしては足底腱膜炎がありますが、それだけではありません。正しい診断には病歴を聞いたり、診察や検査などが必要になります。
足底腱膜炎は踵の痛みの原因として一番有名ですが、かかとの痛みがあるからと言ってすぐにそれと決めつけてはいけません。その他の原因も考慮に入れてしっかり診察することが必要です。
足底腱膜炎は踵から足趾へと伸びる分厚い膜上組織である足底腱膜に炎症と微小な断裂が起こっている状態です。一番痛みが強い部位は踵骨への付着部になります。
足底腱膜炎ではまず朝ベッドから下りた一歩目、そしてある程度座っていた後に歩き始める一歩目などで踵に痛みを感じます。しばらく歩くと徐々に足底腱膜が引き延ばされることで痛みはほぼなくなります。つまり痛みは強いものの短時間でなくなるのが特徴です。しかし症状の進行自体はゆっくりで、徐々に悪くなっていくことが多いようです。改善のためには足底腱膜やアキレス腱のストレッチ、そして靴を正しいものに変えることが必要で、インソールや足底挿板がとても有効です。
患者さんは痛みが出てすぐに病院に来ることはあまりなく、靴を変えたり湿布を貼ってみたりいろいろとご家庭で試行錯誤した後に受診される方が多いようです。
まれに足底腱膜全体が断裂してしまうこともあります。激しい運動をしている際に発生し、これまでの足底腱膜炎の既往とはあまり関連ありません。この場合にはブチっという感覚とともに非常に強い痛みを足底に感じます。歩行しても改善せずずっと痛みを感じるでしょう。
このように足底腱膜炎は踵の痛みの原因の代表的なものですが、他にも踵の痛みの原因となる疾患があるので注意が必要です。
例えば足底腱膜断裂、足根管症候群、Baxter’s nerve entrapment(足部回内による外側足底神経の絞扼:踵内側の痛み)、踵骨疲労骨折、踵骨嚢胞、軟部組織腫瘍、短趾屈筋断裂、痛風、全身性関節炎(狼瘡、関節リウマチ、乾癬性関節炎)など様々な原因があげられます。
他にも踵周辺の痛みではアキレス腱炎、アキレス腱鞘炎、腓骨神経の絞扼や腓骨筋腱断裂など、他の原因がある場合もありますが、これらは踵とは少し違う部位で起こるので鑑別が可能です。