投稿者:下北沢病院 病院長
菊池 守

糖尿病患者さの足のキズ (糖尿病足病変)は非常に治療に難渋し、再発を繰り返す疾患ですが、その治療は3つの時期に分けて考える必要があります。
①不安定な血行や防御知覚が低下した足に対して発生予防を行う時期(発生予防期)、
②発生してしまった足病変を治療する時期(潰瘍治療期)、
③潰瘍が治癒した後で再発予防する時期(再発予防期)、
です。

① 発生予防期

まだ潰瘍が発生していない患者さんに対しても靴の選択の基本やフィッティングの基本を知っていただく必要があります。
靴に対する認識が低いことが多いため足に合わない靴を足の突っ込むようにして履いている患者も多く、専門家によってフィッティングされたウォーキングシューズやアスレチックシューズを正しく選択することが必要です。
糖尿病性神経障害がある患者さんは感覚神経障害により患者は自身の足の状況や靴擦れ、足の痛みなどを自覚することが出来ないため、フットウェアによる積極的保護が必須となります。
これに血行障害や外反母趾など足趾の変形が加わるとさらにリスクが増すと考えてよいでしょう。
そのような患者さんは足病変発生予防のために足底装具や靴型装具を積極的に作成する必要があります。
定期的に観察し、靴の中で足趾が窮屈すぎたり、発赤、胼胝形成といった異常な圧を示唆するような症状があるようならば、足底板やオーダーメイドの整形靴なども含めたフットウェアの作成を勧めるべきでしょう。
特に胼胝は圧力が強い部位に形成され、大きくなると胼胝内に出血を生じて潰瘍が発症します。
定期的な胼胝処置と適切なフットウェアの作成が必要です。

② 潰瘍治療期

潰瘍ができている患者さんにとって大切なことは「患部を完全に免荷する(歩行中当たらない状態にする)」ことです。
もちろん入院して患肢を挙上すれば「完全な免荷」が可能ですが、すべての患者を入院させることは不可能です。
外来通院のまま潰瘍を治癒させるにはどうしたらいでしょうか?
足部の潰瘍は歩行の中で一日中靴の中に擦りつけられてしまいます。
特に感覚神経障害のある患者さんはご自身で患部の痛みを自覚できないので、積極的に保護しなければ患部を擦りつけながらいくらでも歩いてしまいます。
歩行させながら潰瘍を治癒に導くためにはフェルトや患部をくり抜いたサンダルなどで完全に患部にかかるずれ力、圧迫を取り除く「免荷」が必要になります。
患部が悪化するようであれば車椅子や松葉杖などの使用も積極的に勧めるべきでしょう。

③ 再発予防期

発生予防期の項でリスクについて触れましたが、一度でも潰瘍ができた患者さんはそれ単独で最大のリスク群であると言えるでしょう。
潰瘍治癒後の患部や切断後の変形は積極的に装具で保護しなければいけません。
足の形状に合わせて作成した足底板や整形靴によって骨突出部である患部を免荷します。
糖尿病の感覚障害のある患者さんにとっては創部の痛みもないため免荷の必要性が理解されないことが多いです。
またなんとか必要性を理解してもらってフットウェアを作成した後でも、「歩きにくいから履かない」と言って自己判断で履かなくなってしまったり、「装具さえ履いていれば再発が予防できると聞いていたのになぜまた再発するんだ」といったクレームにつながることさえあります。
患者さん自身も医療者もその必要性を十分に共有する必要があるでしょう。

これら3つの治療期とリスクを認識しながら治療することで、糖尿病足病変の治療が有効に機能していきます。
ぜひ患者さんがどの時期なのか、どのくらいのリスクがあるのかを考えてみましょう。

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菊池 守

菊池 守

院長下北沢病院
「教えて、足病先生!」塾長であり日本初の「足」の専門病院の院長。 日本で「足病科」「足病学」を確立する礎となる病院にすることが目下の目標。